山形県は、和牛のブランドとして名高い「米沢牛」を筆頭に、多くの銘柄牛を誇ります。
しかし、これらの牛をまとめて「山形牛」と呼ぶこともあります。
この記事では、「山形牛 米沢牛 どっち?」という疑問を持つ読者のために、それぞれの牛の違い、そして山形県の地理的・環境的要因がどのように肉質に影響を与えるのかを解説いたします。
この記事を読むと、以下のことについて理解できます
- 山形県には多くのブランド牛が存在し、これらを「山形牛」と総称する背景
- 米沢牛の特別な位置づけやその特徴
- 山形牛と米沢牛の歴史や、山形県の地理的・環境的要因が肉質に与える影響
- 米沢牛の定義や、それが「山形牛」の一部であること
山形牛と米沢牛、どっちが高い?:山形牛について
山形牛の歴史
山形県内では、西暦700年代から牛の飼育が始まったと言われています。
しかし、もともとは滋養強壮の薬や農耕用として使われていたため、食用牛としての歴史はそれほど長くはありません。
山形牛が食用として優秀であることが認知されたのは明治時代です。
山形県は奥羽山脈や出羽山地、内陸盆地といった地形が特徴で、豊かな自然のある地域です。
地形の影響で寒暖差がありますが、寒暖差のある地域は農産物も豊富です。
また、慶次清水・滝の清水・館清水など、美味しい水が有名な地域でもあります。
牛は毎日50リットル程度も水を飲むと言われているため、美味しい水は良質な牛の飼育には重要です。
こういった環境が、良質な牛が育つ土台となっていました。
山形牛の品種改良がされ始めたのは昭和30年代で、本格的にブランド牛として品種改良がされたのは昭和40年代の後半からです。
環境に恵まれたことと、もともと品質が良かったために、山形牛がブランド化されるまでそう時間はかかりませんでした。
山形牛の定義
山形牛は、単に山形県で生産される和牛を指すわけではありません。
山形牛としての認定を受けるためには、肉質や色、脂肪の入り方などの特定の基準を満たす必要があります。
山形牛の品質の良さが全国に知られるようになったのは米沢牛がきっかけですが、米沢牛も山形牛の一種です。
山形には、米沢牛のほか、飯豊牛、西川牛、天童牛、東根牛、尾花沢牛等などさまざまなブランド牛があります。
それらを総称して山形牛と呼ぶことから、「総称 山形牛」と呼ばれることもあります。
これは昭和37年に山形県産肉牛の品質や規格を統一する目的で称されるようになったもので、定義としては以下のようなものが該当します。
・山形県内において、最も長く肥育・育成された未経産または去勢の黒毛和種
・肉質4等級以上(上記の条件を満たす場合は3等級でも同様に取り扱う)
・山形県および各行政機関で実施する検査を通過すること
山形牛の特徴
山形には前述のとおり飯豊牛・西川牛・天童牛・東根牛・尾花沢牛など、数多くの山形牛がありますが、そのどれもが食感と風味の豊かさで知られる銘柄牛です。
その美味しさの背景にあるのは、長年の研究のもとに牛の健康を管理する飼育方法にあるのはもちろんですが、山形の地形的・環境的な要因によるところも大きいと言えます。
山形は山脈や盆地の影響により、一年を通しての寒暖差が激しい地域です。
この寒暖差があることで、急激に牛が育つことがなく、成長もゆっくりとなります。
そして、ゆっくり成長するぶん、赤みに細かいサシを含むようになっていくのです。
一般的に和牛は25ヶ月くらいで出荷されるのですが、山形牛は30〜36ヶ月かけて出荷されます。
山形牛は旨みが強いという特徴がありますが、この飼育期間の長さも影響しています。
山形牛と米沢牛、どっちが高い?:米沢牛について
米沢牛の歴史
米沢牛の歴史に関する記述には、必ず1人の外国人の名が挙がります。
現在の米沢興譲館高等学校にあたる米沢県学校に赴任していたイギリス人教師で、チャールズ・ヘンリー・ダラスという人物です。
明治初期、ダラス氏は、当時は四つ足の動物は食べないとされていた米沢で牛肉を食べました。
その味に感動したダラス氏は、任期を終えて居留地である横浜に移りましたが、その際に一頭の牛を連れて行き、友人たちにその牛を振舞いました。
友人たちはその牛肉の美味しさに驚き、米沢の牛は美味しいという評判が広がっていったことが米沢牛の始まりとされています。
米沢牛の定義
米沢牛は、前述した「総称 山形牛」の一つであり、当然ながら山形牛より厳しい基準があります。
・生産地は山形県の置賜地域であり、置賜地域での飼育期間が最も長く、かつ最終飼育地である
・黒毛和種の未経産雌牛で、月齢32ヶ月以上
・飼育者も置賜地域に住んでいて、米沢牛銘柄推進協議会に認定されている
置賜地域とは、米沢市・南陽市・長井市・高畠町・川西町・飯豊町・白鷹町・小国町を指します。
つまり、米沢で飼育されたわけでなくても米沢牛を名乗ることが可能です。
また、去勢牛でも名乗れる山形牛に対し、米沢牛は未経産の雌牛のみという制約があるのが大きな違いです。
米沢牛の特徴
米沢牛は、その肉質と風味で、和牛の中でも特別な位置を占めています。
その肉は、細やかで均一なサシが特徴で、これが極上の柔らかさと、口に入れた瞬間に溶けるような感覚を生み出します。
その特徴は山形牛にも言えるものですが、米沢牛の定義からもわかるように、より時間をかけて牛の肥育に適した土地で育てられたのが米沢牛です。
米沢牛の地位
米沢牛は日本三大和牛の一つにも数えられる和牛です。
三大和牛は他に「松坂牛」「神戸牛」が挙げられますが、もう一つ「近江牛」が挙げられることがあります。
四大和牛と言われる場合は「松阪牛」「神戸牛」「米沢牛」「近江牛」の4つですが、3つに絞った時には近江牛との争いになります。
つまり、松坂牛・神戸牛には敵わないものの、3番手争いという位置づけが米沢牛の立場です。
しかし、雌牛しか認めない米沢牛の方が、去勢牛も認める神戸牛より柔らかく美味しい可能性もあり、必ずしも肉質が劣るわけではないと言えます。
山形牛 米沢牛 どっちが高い?:まとめ
この記事のまとめです。
- 山形には飯豊牛、西川牛、天童牛、東根牛、尾花沢牛など多くのブランド牛が存在する
- これらの牛を総称して「山形牛」と呼ぶことがある
- 山形牛の定義の一つは、山形県内で最も長く肥育された未経産または去勢の黒毛和種である
- 米沢牛はその肉質と風味で和牛の中でも特別な位置を占める
- 米沢牛の肉は細やかで均一なサシが特徴であり、柔らかさが際立つ
- 山形県内では西暦700年代から牛の飼育が始まったとされる
- 山形県は豊かな自然と美味しい水が有名な地域である
- 米沢牛の歴史にはイギリス人教師チャールズ・ヘンリー・ダラスの名が関わっている
- 米沢牛は日本三大和牛の一つとされることがある
- 山形牛は30〜36ヶ月かけて出荷されることが多い
- 米沢牛の定義は生産地が山形県の置賜地域で、未経産の雌牛のみという制約がある
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